とある男子高校生の日常

それは、意図した瞬間じゃなかった


むしろ、避けるべき状況だったと思う


帰り道、校舎裏で足音が重なった


振り返る前に、荒れた声が聞こえる


「……お前さ」


クラスの男子が、彼女の前に立っていた


昼間の噂


誰が何を言ったか、俺は知っている


「暗いんだよ。雰囲気」


彼女は何も言わない


俯いたまま、動かない


——関与するな


頭のどこかで、冷静な声がする


合理的に考えれば、通り過ぎるのが正解だ


それでも、足は止まった


「やめろ」


気づいた時には、声が出ていた


全員がこちらを見る


空気が、一瞬で変わる


「黒瀬には関係ないだろ」


「ある」


短く言い切る


「これ以上、続ける意味がない」


理由は言わない


感情も、乗せない


相手は舌打ちして、去っていった


拍子抜けするほど、あっけなかった


彼女はしばらく動かなかった