とある男子高校生の日常

雨は上がっていた


それでも空は重く、校舎の影が長く伸びている


放課後、屋上に向かうと、彼女はすでにいた


いつもより、柵から離れた場所に立っている


「……遅かったね」


責める声じゃない


けれど、どこか張りつめていた


「少し、用があった」


それ以上は聞かれない


いつも通りの距離のはずだった


「今日さ」


彼女は空を見ないまま言った


「もう、笑わなくていいって言われた」


胸の奥が、僅かに沈む


「……誰に」


「友達。たぶん、悪気はない」


悪気がない言葉ほど、厄介だ


俺は知っている。


彼女は続けた


「明るくしてると疲れるって言ったでしょ。それを、弱いって」


言葉が途切れる。


風が吹き、フェンスが鳴った


「私、間違ってるのかな」


その問いは、俺に向けられていない


答えを期待していない声だった


「……間違ってない」


気がつけば、俺は彼女にそう言っていた