1. 楽園を切り裂く、冷徹な現実
モルディブ、プライベートアイランドの最終日の朝。
波の音は昨日までと変わらず穏やかで、テラスからは宝石をぶちまけたようなエメラルドグリーンの海が一望できた。しかし、ヴィラの寝室に漂う空気は、一通の衛星電話の着信を境に、劇的な変化を遂げていた。
一ノ瀬駿――私の夫であり、この楽園の支配者は、シルクのガウンを羽織ったまま、テラスで漆黒のスマートフォンを耳に当てていた。その横顔は、昨夜まで私を甘い言葉で溶かしていた「ナイト」のそれではなく、日本経済を動かす一ノ瀬財閥の「帝王」そのものの、鋭く冷徹な輝きを取り戻していた。
「……ああ、わかった。執事長、親父の容態は? ……そうか。緊急理事会は俺が戻るまで待たせろ。一ノ瀬の看板を汚すような真似は、誰であれ許さない」
電話を切った駿さんが、ゆっくりと私の方を振り返った。
私はベッドの中でシーツを抱きしめたまま、その圧倒的な威圧感に気圧されていた。ハネムーンの甘い夢が、音を立てて現実という名の強固な壁にぶつかり、砕け散っていく。
「凛。予定を切り上げる。一時間後にプライベートジェットを出す」
「……駿さん。お義父様が、倒れられたんですか?」
「脳梗塞だ。命に別状はないが、意識が混濁している。……この機を逃さず、親戚のハイエナどもが一ノ瀬グループの利権に群がり始めた。……俺が戻り、すべての『檻』の鍵を俺の手に集める必要がある」
駿さんは私のそばに歩み寄り、その長い指先で私の頬を撫でた。その手は、昨夜の情事の名残で微かに熱を持っていたが、瞳には一切の迷いがない。
「凛。……ここからは、昨日までの『遊び』のような新婚旅行とは違う。お前を一ノ瀬の『正妻』として、日本中の敵の前に晒すことになる。……お前の有能な仕事ぶりも、俺への忠誠も、すべてを一ノ瀬という名の巨大な監獄の維持に捧げてもらうことになるが……。ついてくるか?」
(……来た。……これが、ハイスペック男子と結婚するということの、本当の意味……!)
私は、心臓が爆死しそうなほど激しく打つのを感じた。
でも、不思議と恐怖はなかった。
一ノ瀬駿という男が、三年前から私を「完璧なプロデューサー」として育て上げ、私を「ナイト」という声の檻で調教し、そして今、この場所に立たせている。そのすべての伏線が、今この瞬間のためにあったのだと確信したからだ。
2. 帝王の傍らに立つ、覚悟の正妻
一時間後、私たちはプライベートジェットの機内にいた。
モルディブの青い海が遠ざかり、機体は高度一万メートルの安定飛行に入る。機内には、駿さんの秘書たちがリモートで繋がったモニターが並び、瞬時にビジネスの戦場へと姿を変えていた。
「凛。……怖気づいたか?」
書類に目を通していた駿さんが、ふと顔を上げた。
私は、彼から贈られた最高級のシャネルのネイビーのセットアップに身を包み、背筋をピンと伸ばして答えた。
「いいえ。……むしろ、血が騒いでいます。……駿さんが一ノ瀬のすべてを背負うというなら、私はそのすべてを支える『最強のパートナー』にならなければいけない。……三年前、部長に叩き込まれた仕事のスキル、ここで使わなくていつ使うんですか?」
駿さんは一瞬だけ意外そうに目を見開き、その後、堪えきれないように低く笑った。
「……ふっ、ははは! さすがは俺の選んだ女だ。……凛、お前は本当に、俺が欲しかった言葉を、最も完璧な周波数で届けてくれるな」
駿さんはタブレットを置き、私の腰を引き寄せて自分の膝の上に座らせた。秘書たちがモニター越しに絶句しているのが分かったが、彼は一切気に留めない。
「『……いいか、凛。……日本に戻れば、お前を中傷する奴も、俺たちの仲を裂こうとする奴も現れるだろう。……だが、忘れるな。……お前の後ろには、一ノ瀬駿という名の「ナイト」が常に控えている。……お前を傷つける奴は、俺が声ひとつで、社会的に抹殺してやる』」
耳元で響く、ナイトの極上低音。
それはかつて、深夜二時のアパートで聴いた救いの声。
でも今は、私と共に地獄を生き抜く、戦友の誓いのように聞こえた。
「……駿さん。……抹殺なんて、物騒なことはしないでください。……その代わりに、私が彼らを黙らせるだけの『完璧な正妻』としての結果を出して見せます。……あなたの資産も、家柄も、そしてその『独占欲』も……すべて私が管理(プロデュース)してみせますから」
(……言っちゃった! でも、これが私の本音。……駿さんに飼われるだけじゃない。……私も、駿さんの人生を一生かけてプロデュースするんだ!)
3. 一ノ瀬本邸、沈黙の対峙
成田空港に到着後、私たちはその足で鎌倉の一ノ瀬本邸へと向かった。
重厚な門を潜り、広大な庭を抜けて辿り着いた広間には、案の定、一ノ瀬一族の親戚たちが集まっていた。彼らの視線は鋭く、獲物を狙う野犬のように殺気立っている。
「……駿、帰ったか。……それと、そこにいるのは……例の、どこの馬の骨とも知れぬ小娘か」
一族の最長老が、冷たく言い放った。
凛は、かつての「氷壁の聖女」を凌駕する、圧倒的な気品と冷徹さを纏って、その前に立った。
「……初めまして。一ノ瀬駿の妻、一ノ瀬凛です。……お義父様の看病、およびグループの混乱の収拾は、私共夫婦が責任を持って務めさせていただきます。……ご親戚の皆様には、余計なご心配をおかけしないよう、万全の態勢を整えておりますので、どうぞご安心してお帰りください」
一分の隙もない完璧な挨拶。
その場の空気が凍りついた。
「……な、何を小娘が! お前に何ができるというのだ!」
「私ができるのは、『管理』です。……皆様が過去、グループの経費で私的な交際費をどれだけ計上されているか、不適切な資産移動がどこにあるか……。……三年前から、駿さんが私に命じてリスト化させていたデータが、ここにあります」
凛は、手元のタブレットを静かに提示した。
そこには、一ノ瀬一族の闇をすべて暴く「機密資料」が並んでいた。
(……ふふ、驚いたかしら? ……駿さんがハネムーン中に私に『ゲーム』と称して解析させていたデータ、実はこれだったのよ。……駿さん、本当に、愛が重いというか、準備が良すぎるわ……!)
親戚たちは一様に顔を青くし、言葉を失った。
駿さんは、私の背後に立ち、その広い肩に手を置いた。
「……聴いたか。……俺の妻は、俺以上に容赦がない。……お前たちがこれ以上、俺の家庭と経営に口を出すというなら、今この瞬間から、一ノ瀬の姓を名乗る権利を剥奪し、奈落へ叩き落としてやる」
一族の連中が、逃げるようにして広間を去っていく。
静寂が戻った広間で、私は駿さんの腕の中に崩れ落ちた。
「……駿さん……私、やりすぎちゃいました?」
「いや、最高だった。……凛、お前はやはり、俺の『檻』の看守に相応しい」
4. 病室の誓い、そして真の継承
私たちは、本邸の一室にある医療ルームへと向かった。
そこには、多くの管に繋がれ、眠るように横たわる巌(父)の姿があった。
駿さんは、父の痩せた手を取り、静かに告げた。
「……親父。……俺は、あんたのやり方を否定してここまできた。……だが、一ノ瀬を守り抜くという執念だけは、継承してやる。……ただし、俺には、あんたにはいなかった『最高の伴侶』がいる。……俺たちは、あんたが作った古い檻を壊し、新しい、愛に満ちた檻を一から作り直すつもりだ」
凛は、駿さんの隣に立ち、巌に向かって深く頭を下げた。
「……お義父様。……駿さんのことは、私にお任せください。……彼を誰よりも愛し、誰よりも厳しく律し、そして世界で一番幸せな男にしてみせます」
その時、巌の指が微かに動いたような気がした。
それは、厳しい父からの、最初で最後の「受理(アクセプト)」だったのかもしれない。
5. エピローグ:ハニースイート・ハネムーンの真の完結
一週間後。
一ノ瀬グループの混乱は、駿さんの圧倒的な指導力と、凛の「完璧な秘書的立ち回り」によって、完全に鎮圧された。
サンスターツの副社長室。
駿さんは、窓から東京の街を見下ろしながら、膝の上に凛を座らせていた。
「……凛。結局、ハネムーンの後半は戦場になってしまったな。……埋め合わせが必要だ」
「いいえ、駿さん。……私にとっては、あなたと一緒に戦うこと自体が、最高にエキサイティングなハネムーンでした。……それに」
凛は駿さんの首に手を回し、その耳元で囁いた。
「……夜の『レッスン』は、日本に戻ってきても、全然休みなしじゃないですか。……昨日も、明け方まで私の声を録音(サンプリング)して……。……部長、いえ、副社長。……あなたの独占欲は、日本でも健在ですね」
駿さんは満足げに目を細め、凛の唇を奪った。
「『……当然だ。……一ノ瀬のすべてを手に入れたが、俺が一番欲しいのは、今も昔も、お前のその、俺の名を呼ぶ掠れた声だけだ』」
窓の外には、無限に広がる東京の夜景。
その中心で、二人は誰にも邪魔されない「愛の檻」の中にいた。
ハイスペック男子による、狂気的な溺愛。
完璧なヒロインによる、誇り高き受理。
二人の物語は、これからも甘いアロマの香りと、極上の低音ボイスに包まれながら、永遠に続いていく。
(……受理。……はい、駿さん。……私は一生、あなただけの『推しの妻』として……この巨大な檻の中で、幸せに爆死し続けます!)
【ハニースイート・ハネムーン編】 完結
モルディブ、プライベートアイランドの最終日の朝。
波の音は昨日までと変わらず穏やかで、テラスからは宝石をぶちまけたようなエメラルドグリーンの海が一望できた。しかし、ヴィラの寝室に漂う空気は、一通の衛星電話の着信を境に、劇的な変化を遂げていた。
一ノ瀬駿――私の夫であり、この楽園の支配者は、シルクのガウンを羽織ったまま、テラスで漆黒のスマートフォンを耳に当てていた。その横顔は、昨夜まで私を甘い言葉で溶かしていた「ナイト」のそれではなく、日本経済を動かす一ノ瀬財閥の「帝王」そのものの、鋭く冷徹な輝きを取り戻していた。
「……ああ、わかった。執事長、親父の容態は? ……そうか。緊急理事会は俺が戻るまで待たせろ。一ノ瀬の看板を汚すような真似は、誰であれ許さない」
電話を切った駿さんが、ゆっくりと私の方を振り返った。
私はベッドの中でシーツを抱きしめたまま、その圧倒的な威圧感に気圧されていた。ハネムーンの甘い夢が、音を立てて現実という名の強固な壁にぶつかり、砕け散っていく。
「凛。予定を切り上げる。一時間後にプライベートジェットを出す」
「……駿さん。お義父様が、倒れられたんですか?」
「脳梗塞だ。命に別状はないが、意識が混濁している。……この機を逃さず、親戚のハイエナどもが一ノ瀬グループの利権に群がり始めた。……俺が戻り、すべての『檻』の鍵を俺の手に集める必要がある」
駿さんは私のそばに歩み寄り、その長い指先で私の頬を撫でた。その手は、昨夜の情事の名残で微かに熱を持っていたが、瞳には一切の迷いがない。
「凛。……ここからは、昨日までの『遊び』のような新婚旅行とは違う。お前を一ノ瀬の『正妻』として、日本中の敵の前に晒すことになる。……お前の有能な仕事ぶりも、俺への忠誠も、すべてを一ノ瀬という名の巨大な監獄の維持に捧げてもらうことになるが……。ついてくるか?」
(……来た。……これが、ハイスペック男子と結婚するということの、本当の意味……!)
私は、心臓が爆死しそうなほど激しく打つのを感じた。
でも、不思議と恐怖はなかった。
一ノ瀬駿という男が、三年前から私を「完璧なプロデューサー」として育て上げ、私を「ナイト」という声の檻で調教し、そして今、この場所に立たせている。そのすべての伏線が、今この瞬間のためにあったのだと確信したからだ。
2. 帝王の傍らに立つ、覚悟の正妻
一時間後、私たちはプライベートジェットの機内にいた。
モルディブの青い海が遠ざかり、機体は高度一万メートルの安定飛行に入る。機内には、駿さんの秘書たちがリモートで繋がったモニターが並び、瞬時にビジネスの戦場へと姿を変えていた。
「凛。……怖気づいたか?」
書類に目を通していた駿さんが、ふと顔を上げた。
私は、彼から贈られた最高級のシャネルのネイビーのセットアップに身を包み、背筋をピンと伸ばして答えた。
「いいえ。……むしろ、血が騒いでいます。……駿さんが一ノ瀬のすべてを背負うというなら、私はそのすべてを支える『最強のパートナー』にならなければいけない。……三年前、部長に叩き込まれた仕事のスキル、ここで使わなくていつ使うんですか?」
駿さんは一瞬だけ意外そうに目を見開き、その後、堪えきれないように低く笑った。
「……ふっ、ははは! さすがは俺の選んだ女だ。……凛、お前は本当に、俺が欲しかった言葉を、最も完璧な周波数で届けてくれるな」
駿さんはタブレットを置き、私の腰を引き寄せて自分の膝の上に座らせた。秘書たちがモニター越しに絶句しているのが分かったが、彼は一切気に留めない。
「『……いいか、凛。……日本に戻れば、お前を中傷する奴も、俺たちの仲を裂こうとする奴も現れるだろう。……だが、忘れるな。……お前の後ろには、一ノ瀬駿という名の「ナイト」が常に控えている。……お前を傷つける奴は、俺が声ひとつで、社会的に抹殺してやる』」
耳元で響く、ナイトの極上低音。
それはかつて、深夜二時のアパートで聴いた救いの声。
でも今は、私と共に地獄を生き抜く、戦友の誓いのように聞こえた。
「……駿さん。……抹殺なんて、物騒なことはしないでください。……その代わりに、私が彼らを黙らせるだけの『完璧な正妻』としての結果を出して見せます。……あなたの資産も、家柄も、そしてその『独占欲』も……すべて私が管理(プロデュース)してみせますから」
(……言っちゃった! でも、これが私の本音。……駿さんに飼われるだけじゃない。……私も、駿さんの人生を一生かけてプロデュースするんだ!)
3. 一ノ瀬本邸、沈黙の対峙
成田空港に到着後、私たちはその足で鎌倉の一ノ瀬本邸へと向かった。
重厚な門を潜り、広大な庭を抜けて辿り着いた広間には、案の定、一ノ瀬一族の親戚たちが集まっていた。彼らの視線は鋭く、獲物を狙う野犬のように殺気立っている。
「……駿、帰ったか。……それと、そこにいるのは……例の、どこの馬の骨とも知れぬ小娘か」
一族の最長老が、冷たく言い放った。
凛は、かつての「氷壁の聖女」を凌駕する、圧倒的な気品と冷徹さを纏って、その前に立った。
「……初めまして。一ノ瀬駿の妻、一ノ瀬凛です。……お義父様の看病、およびグループの混乱の収拾は、私共夫婦が責任を持って務めさせていただきます。……ご親戚の皆様には、余計なご心配をおかけしないよう、万全の態勢を整えておりますので、どうぞご安心してお帰りください」
一分の隙もない完璧な挨拶。
その場の空気が凍りついた。
「……な、何を小娘が! お前に何ができるというのだ!」
「私ができるのは、『管理』です。……皆様が過去、グループの経費で私的な交際費をどれだけ計上されているか、不適切な資産移動がどこにあるか……。……三年前から、駿さんが私に命じてリスト化させていたデータが、ここにあります」
凛は、手元のタブレットを静かに提示した。
そこには、一ノ瀬一族の闇をすべて暴く「機密資料」が並んでいた。
(……ふふ、驚いたかしら? ……駿さんがハネムーン中に私に『ゲーム』と称して解析させていたデータ、実はこれだったのよ。……駿さん、本当に、愛が重いというか、準備が良すぎるわ……!)
親戚たちは一様に顔を青くし、言葉を失った。
駿さんは、私の背後に立ち、その広い肩に手を置いた。
「……聴いたか。……俺の妻は、俺以上に容赦がない。……お前たちがこれ以上、俺の家庭と経営に口を出すというなら、今この瞬間から、一ノ瀬の姓を名乗る権利を剥奪し、奈落へ叩き落としてやる」
一族の連中が、逃げるようにして広間を去っていく。
静寂が戻った広間で、私は駿さんの腕の中に崩れ落ちた。
「……駿さん……私、やりすぎちゃいました?」
「いや、最高だった。……凛、お前はやはり、俺の『檻』の看守に相応しい」
4. 病室の誓い、そして真の継承
私たちは、本邸の一室にある医療ルームへと向かった。
そこには、多くの管に繋がれ、眠るように横たわる巌(父)の姿があった。
駿さんは、父の痩せた手を取り、静かに告げた。
「……親父。……俺は、あんたのやり方を否定してここまできた。……だが、一ノ瀬を守り抜くという執念だけは、継承してやる。……ただし、俺には、あんたにはいなかった『最高の伴侶』がいる。……俺たちは、あんたが作った古い檻を壊し、新しい、愛に満ちた檻を一から作り直すつもりだ」
凛は、駿さんの隣に立ち、巌に向かって深く頭を下げた。
「……お義父様。……駿さんのことは、私にお任せください。……彼を誰よりも愛し、誰よりも厳しく律し、そして世界で一番幸せな男にしてみせます」
その時、巌の指が微かに動いたような気がした。
それは、厳しい父からの、最初で最後の「受理(アクセプト)」だったのかもしれない。
5. エピローグ:ハニースイート・ハネムーンの真の完結
一週間後。
一ノ瀬グループの混乱は、駿さんの圧倒的な指導力と、凛の「完璧な秘書的立ち回り」によって、完全に鎮圧された。
サンスターツの副社長室。
駿さんは、窓から東京の街を見下ろしながら、膝の上に凛を座らせていた。
「……凛。結局、ハネムーンの後半は戦場になってしまったな。……埋め合わせが必要だ」
「いいえ、駿さん。……私にとっては、あなたと一緒に戦うこと自体が、最高にエキサイティングなハネムーンでした。……それに」
凛は駿さんの首に手を回し、その耳元で囁いた。
「……夜の『レッスン』は、日本に戻ってきても、全然休みなしじゃないですか。……昨日も、明け方まで私の声を録音(サンプリング)して……。……部長、いえ、副社長。……あなたの独占欲は、日本でも健在ですね」
駿さんは満足げに目を細め、凛の唇を奪った。
「『……当然だ。……一ノ瀬のすべてを手に入れたが、俺が一番欲しいのは、今も昔も、お前のその、俺の名を呼ぶ掠れた声だけだ』」
窓の外には、無限に広がる東京の夜景。
その中心で、二人は誰にも邪魔されない「愛の檻」の中にいた。
ハイスペック男子による、狂気的な溺愛。
完璧なヒロインによる、誇り高き受理。
二人の物語は、これからも甘いアロマの香りと、極上の低音ボイスに包まれながら、永遠に続いていく。
(……受理。……はい、駿さん。……私は一生、あなただけの『推しの妻』として……この巨大な檻の中で、幸せに爆死し続けます!)
【ハニースイート・ハネムーン編】 完結



