スケッチブック

【今後悔色】

ーー雪

体育館の匂いは、
もう懐かしいものになっていた。
大学のキャンパスを歩きながら、
ふと、
バスケットゴールを見上げる。

——まだ、届くかな。

そう思って、
少しだけ笑った。

人と話すのは、
相変わらず苦じゃない。
後輩にも、
友達にも、
ちゃんと優しくできる。
でも、
“踏み込む”ことだけは、
今でも、少し慎重だ。

夜、
部屋に戻って、
机の引き出しを開ける。
奥にしまったままの、
古いイヤホン。
スマホをつける。

📻 作楪:配信中

「こんばんは~」
その声を聴くと、
胸の奥が、
少しだけ痛む。

——あのとき、
言えばよかった。

今さら、
どうにもならないことを、
もう、ちゃんと知っている。

それでも、
後悔が、
自分を大人にしたことも。
雪は、
スマホを伏せた。
窓の外で、
風が、木を揺らしている。胸の奥で、何かが小さく鳴った。