なーんて。だけどもし本当にわたしが大人っぽくなったらどうだろう。凪の歴代彼女はほぼ全員年上だった。
あの日、凪が失恋したって元気がなかった日は──あのときの好きな人は、同い年だったな、なんてあんまり考えたくないことが思い浮かんだので、消し去るようにお肉を頬張った。
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いつも以上に入念に歯を磨いてケアをして、焼肉の残り香をできるかぎり消し込む。今日は三戸さんも涼名ちゃんもわたしも、午後は会議や打合せの予定がない。そういう日を狙い撃ちしたのだ。
……だから、油断していた。
「お疲れさま、児玉さん」
お手洗いから戻る途中の、執務室前の共用スペース。わたしを狙い撃ちして足を止める言葉が鼓膜を揺らした。
机と椅子がふたつずつ並んでいて、観葉植物が飾ってあるこの空間が実は好きだったりする。そんなお気に入りスペースの壁にもたれるように立つ人物がわたしを呼び止めた。



