主語がなくとも、言いたいことがわからないほど鈍感ではない。
わたしを覗き込むように口角をくい、と左右対称に上げる涼名ちゃんが視界いっぱいに映った。面白がって楽しんでるときの顔だ。可愛らしいのが余計に恨めしい。
「……なんてね?お嬢先輩には心に込めた人、いそうですし」
「そ、そうだよ!いるよ!」
「あ、いるんだ」
「〜〜っ!?涼名ちゃん〜!?」
「てへ、情報はこうしてゲットしていくのです」
きらん、と効果音でもついていそうなウインク攻撃でわたしの負けだと確信する。策士な後輩、侮れない。
だけど今はなぜだか涼名ちゃんは名波さんとの仲を疑っているからまだ安心だ。凪とのことは知られないようにしなければ。いつ勘付かれてもおかしくない。
「ま、でも、お嬢がやりきってくれたのは確かだし。ありがとうね、助かったよ」
「い、いえ!三戸さんのお役に立てて光栄です」
涼名ちゃんの独壇場が終わって改めて三戸さんがお礼をこぼす。やさしく目を細めるから、ぴし、と背筋が伸びる。
憧れのひとにこうして感謝されること、嬉しくてたまらない。自然と頬が緩んでしまう。



