ながされて、絆されて、ふりむいて


正解なわけはないので、名波さんがわたしを訪ねてきた、その事実だけが頭に残ってぐるぐるした。わたしに用事って、何……?


相変わらず、網には三戸さんからわたしへのご褒美が美味しそうな音を奏でている。



「てか、てかてか!今回の用事もそうですし、この間も福利厚生関連で名波さんとお話してたじゃないですか!好きになってないんですか?」


「あぁ、確かに名波さんとの関わりって言えばそれはあるかも。用件、この間の定期預金解約の件かなぁ」



名波さんがわたしを訪ねる用なんて、おそらくそれしか考えられない。企業規模が大きい分、人員も多く配置されていて仕事や案件も細分化して割り振られている。そういくつもわたしだけに相談ごとがあるわけないのだ。


ひとり納得して箸を止めずにいれば、今度は三戸さんの口が開く。



「名波って『関わったら女子社員は全員名波を好きになる』なんて噂があるほどモテるんだっけ?人事としては社内恋愛して痴話トラブル起こしてほしくないのが本音なのよね」


「そりゃああのルックスと甘い笑顔!好きになっちゃいますよね〜!それに、茅野さんが更新するまで最年少表彰って名波さんだったんですよね?シゴデキ〜!」


「そうそう、茅野ほど大幅ではないけど、名波もちょっとだけ独り立ち前倒しにしたのよ。企画広報部行ったのも部長直々のスカウトだし」