わたしの返したボールをひょい、と軽々宙に浮かせて、凪の手のひらに収まる。ボールを蹴るために離れていた20メートル。少しずつ、近くなる。夕陽に照らされて凪がオレンジ色に輝く。
今までもわたしが凪の身長を抜かしたことはなかったけれど、中学に入ってからはもう比べ物にならないくらい。その影が長く伸びて、表情を確認するには視線を持ち上げなければ届かない。
「もしサッカー選手になったらこうやって気軽に花鈴とも会えなくなる。嫌だな」
花が綻ぶようにふわふわと笑みを浮かべた凪の淡い瞳に、捕まった。それはやさしくて、まっすぐで、温かくて。
わたしも凪に会えなくなるのはいやだ。憂鬱なテスト週間をきらめきに変える魔法は凪がかけてくれるから、ずっとひとりじめしていたい。
何歳になっても、凪のとなりにいられたらいいななんて無邪気に考えていた。



