顔を上げたら、珍しく意地悪く楽しそうに笑う顔が映った。そんな表情すら、整っていて綺麗でわたしのこころを奪っていくからずるい。
いつ人が来てもおかしくないけれど、一度退勤したら大体戻ってくることはないホワイト企業で助かっている。申し訳程度の反撃だけ音に込めた。
「〜〜っばか!!!」
「花鈴だってそうでしょ、俺のキス好きじゃん?」
「(好きも何も凪のキスしか知らないの、ばか!)」
そんな事実は、わたしの奥底の鍵付きスペースに仕舞い込んでおいた。
今は凪としか会っていない設定だけど、本来は凪以外にもすきな男の子がたくさんいて、奔放な女、って思わせてきたんだから。あの日、凪が罪悪感を抱かないように、決めたの。
「……けどさ、花鈴」



