「……じゃあ……お言葉に、甘えて?」
デスク両サイドに散乱させていた資料を整えて、凪にやってほしいことを伝える。
「えっと、予算案作ってるから、関係部に送るためのメール下書きを作ってほしい。あとは、おじさんたちのために資料を紙ベースで10部ずつ準備してもらえたら助かる」
「了解。メールは花鈴のアドレスに本文そのまま飛ばして紙はファイリングしとく」
普段は後輩である涼名ちゃんや事務のお姉さまに手伝ってもらうことを凪にお願いするのは気が引けるけれど。
凪のパソコンからでもできる作業をお願いすれば、すぐさまテキパキと手が動く。
「懐かしいな。入社前、ビジネスメールの作りかたいっしょに勉強したのもう二年前か」
「ね。『承知いたしました』は二重敬語に見えて、実は違うから大丈夫とか。今ものすごく活きてるよ」
「俺も。上司に再鑑してもらって指摘されても自信持って言い返せるからね」
「凪も言い返すことあるんだ」
「あるよ、言い返さないのは基本花鈴にだけ」
他愛のない会話が膨らんで、自然と笑みが溢れる。凪と話すことは日常に近いからか、口が動きつつも手が止まることはなかった。



