ながされて、絆されて、ふりむいて




視界の端でせわしく動いていた涼名ちゃんの動きが完全にストップして、デスクにうなだれていた。「尊い……」という細くて瀕死の声は空間に残りきらず消えていった。


まわりを瞬殺でノックアウトできる名波さんだけれど、わたしはノーダメージだ。



「(だって、わたしに効くのは生まれてこのかた茅野凪だけ!)」



……いけない、お仕事モードに脳を切り替えないと。一瞬で凪モードへ引きずりこまれる、あぶない。珊瑚色を乗せたほっぺが凪への恋心で上書きされないようにしないと。



「光栄です。ではこれお渡ししますね。記入例も入れていますが、もしわかりづらい部分があったらまた教えてください」


「了解。ありがとう。書いてまた持って来るね」


「はい、お願いします」



ファイルごとお渡しするとそのまま名波さんは手を振りながら帰っていった。


うなだれて死にかけていた涼名ちゃんが「お嬢先輩ばっかりずる〜い」と元気になっていた。




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