ここまで来てくれた彼に、挨拶といっしょに投げかけた。特に座席表を見ていた様子はなく、目が合ってすぐに確信して向かってきてくれたから。
もちろんわたしは──というか社内の人間は名波さんのことを知っているはずだけれど、彼がすぐにわたしを児玉花鈴だと認識したのが不思議だった。クエスチョンマークが迷い込んできて、頭の上に乗っけた。
わたしの問いかけに「もちろん」と小さく放って、ゆっくりと口角を持ち上げながら続けた。その麗しい表情に、涼名ちゃんが顔を手で覆いながら悶絶する様子が視界の端に映った。
「去年の新卒の中で一番かわ………いや、こういうのあんまり言っちゃいけないか、ハラスメント厳しいし」
「え?なんて言って……?」
「聞こえてなくて大丈夫。去年の児玉さん、期待の新人が入ってきたって話題になったから。茅野と同じくどの部署もドラフト1位だったよ」
「か、茅野くんはわかりますけど、わたし……?」
「うん、だから知ってたよ。児玉さんのこと」
微笑みが、甘めく。ふんわりと預けられた視線と瞬時にひとを惹き込む雰囲気。瞳とおなじく色素の薄い髪が揺れた。
これはたしかに、間近で受けたらすぐに好きになってしまう。



