ながされて、絆されて、ふりむいて



「……なぎ、」



名前を呼んで、そのままぎゅう、と抱きついた。

会社の中で、スーツ姿の凪とはくっつけないから、シャワーを浴びる前の特別だ。



「花鈴、何かあった?」



普段こうして抱きつくことがないから、さらに凪は私に疑問を上乗せしたのだと思う。

悲しいこととか寂しいこととかがあったわけじゃない、ただきみに会いたかった。



「ううん、何もないよ。何もないけど……なんとなくって、嘘。今日、凪の時間無駄にしちゃったの謝りたくて来た」


「そんなの気にしなくていいのに。一日中部長に捕まってうんざりしてたから助かったよ」



穏やかに掬う声色が頭上に降ってくる。


ちがう、ちがう。わたしが伝えたいのは、そうじゃない。



「ね、凪」


「ん?」



名前を呼ぶと、やさしく返してくれる。そしてわたしの背中にも腕を回してくれる。心地よくわたしを撫でる安心する腕。わたしだけが知っていたい温もり。