……それにしても。
「(う、かっこよすぎる。なぎ)」
あさ、家を出る前にスーツ姿の凪を見ることはあっても社内でお目にかかれることは滅多にない。
紺のスーツにえんじのネクタイ。きっちりスマートに着こなす凪に、瞳の真ん中をハートにしかけて、ぶんぶんと頭を振る。
しっかりしてね、児玉花鈴。見惚れている暇もなければ、見惚れていい間柄でもない。
……だけど本音としては、かっこよすぎて心臓がうるさくてこまる。どきどきうるさい。
「(凪ってほんとに昔からずっとかっこいい)」
あいもかわらず人々の視線を奪う営業部の凪と、人事部採用チームに属するわたし。業務において、普段は関わりがゼロだけど、たまたま仕事が重なることがあった。
今回のミーティングは大学三年生向けの会社説明会について。凪の出身である国見大学にOBとして登壇してもらうことになった。
その打合せをしようと1ヶ月くらい前にスケジュールを押さえていたのをすっかり失念していたのだ。あまりにも社会人失格。



