どのメニューも美味しいけれど、特にパスタメニューはわたしも彼女もお気に入りだから今日はラッキーな日だ。メインのパスタとスープとドリンクのセット。食後にはカフェラテ、栞さんはきまってホットココア。
このラインナップで1000円は都内では破格だと思う。だけど会社から少し離れていることもあって、滅多に同僚と遭遇することのない貴重な穴場だ。
向かいに座る、控えめな笑みを浮かべる栞さん──古賀栞さんは、わたしの憧れ、ロールモデルのようなひとだ。
「それで今日は凪くんのどんな素敵エピソードを聞かせてくれるの?」
穏やかで綺麗、儚げで上品。同性のわたしでも恋をしてしまいそうなふわりと透明なオーラを纏うひと。
栞さんの旦那さんも同じように柔らかで誠実で、誰が見てもお似合いだと評するだろう。わたしが出会ったとき古賀姓だった彼女は、今はもう南雲 栞さんだ。



