◻︎▫︎ ──昨日はあのまま凪に背を向けて、家には行かなかった。べつに、追いかけて来てもくれなかった。 「おはよ、児玉さん」 「え、」 日本語訳、払う払う、の聞き慣れた電子決済のリズムはわたしのスマホからではなく、後ろから現れた人物のスマホから奏でられた。 ビル1階、青色のコンビニ。いつも通りカフェオレをセルフレジに通して会計をする、そのタイミングで電子音を鳴らす権利を奪われた。 スマホの間抜けな決済のメロディーと、わたし宛ての心地よいあいさつに鼓膜が揺れる。