「なんでって……覚えてないの?」
「え?」
「そっか」
……凪は、覚えていないんだ。ちくりと胸に針を刺す。
凪はあんなふうにわたしをひとりじめしようとして、結局、わたしばっかりが凪のことをすきでいる。いつも、わたしばかり。彩り続ける恋色は、凪しか色を足せないのに、わたしばかりが濃さを増している。
……名波さんに言われた通り、凪にとってわたしはきっと都合のいいセフレでしかない。関係を持ってしまった以上、幼なじみなんて聞こえのいい関係でもなく、欲に塗れた一方的通行な関係だ。
独占欲もすべて、すきには繋がらない。
「花鈴、ごめん、なんでそんな悲しい顔──」
……寂しさ、悲しさ、どろどろと煮詰まってしまった感情が出てしまっていただろうか。
わたしをそんな表情にさせるのは目の前のきみだけだけれど、そんなことは言えない、から。
「ううん、なんでもないよ」
この間と同じ。またわたしは、キスで隠して誤魔化した。
脆い曖昧さで引き留め続けている。高校一年生だったあの日から、わたしはちっとも成長していない。ずっと凪を縛ったままだ。
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