ながされて、絆されて、ふりむいて


「うん。そうそう」


「ですよね〜! お嬢先輩迎えにくる茅野さん拝むために予定空けてあります」


「いや、茅野くんとは一階のロビーで待ち合わせようかと」


「いいえ、茅野さんは必ず先輩を迎えにきます。必ずです」



……涼名ちゃんの自信はどこから来るのだろうか。ぴん、と人差し指を立てて確信的に言い切った彼女は今日も可愛らしい。



「同期なのに全然わかんないや」


「私、推しの生態はわかるんですよね〜! マメですから、茅野さん」



カモフラージュのような嘘を重ねてから、涼名ちゃんに送っていた視線をデスクトップに戻す。確かに取引先からの気に入られ方も断トツで良いと聞くし、わたしが相手でなくても迎えに行くというのは想像に難くないのかもしれない。


ちょうどそのタイミングで、右下通知欄に映るは"茅野凪"の文字。



「(涼名ちゃん、わたしより凪マスター?)」



大きな瞳をきらっきらに輝かせる涼名ちゃんの言う通り、チャットで《水曜13時、9階に迎え行くから》と送られてきた。エスパーか何かだろうか、わたしより茅野凪を理解している。



《あと、今からちょっとだけ執務室、出れる?》