ながされて、絆されて、ふりむいて



◻︎▫︎



よく利用する15階の休憩スペースはフリードリンクが置かれている。カフェオレのキャラメルトッピングがお気に入りで、外に出ず社食で済ますときにはここで甘さを摂取して午後に向かうのだ。



「児玉さん」



今日も変わらず一息ついていれば、降ってきたひとつの声。ゆったりしていて心地が良くて、反射的に顔を上げた。



「名波さん、お疲れさまです」



4人がけの机にひとりで座っていたわたし。向かいに腰掛けた名波さんは今日も掴めない笑みを浮かべていた。



「無事、解約通知きたよ。ありがとね」


「良かったです。妹さんのご準備も順調ですか?」


「うん、順調だよ。妹も義理の弟も俺のこと好いてくれてるからかな、俺までドレス選びに同席させられてる」
「慕われてるんですね」



「まあ、そうかも」と柔らかく目を細めた名波さんは愛情が豊かなひとなのかな、なんて思わせる。まだまだおひる休憩中の社員の多いこの空間。


名波さん、というかわたしたちに視線がちらちらと集まっているような気がするけど彼は全く何も感じていないみたいだった。日頃から視線を受けすぎているからだろうか。