……むかつく? 温厚穏やか神さまみたいな凪が?
一瞬だけ、凪の顔が歪んだような気がして、それは普段わたしに向けるものでは全くなくて。
その表情の意味を探っているあいだに革靴を脱いで、凪専用に置かれているスリッパに足をはめ込んでいた。
「花鈴」とわたしの名前を呼んで、それから。
「……あと、」
腕を引かれたのと同時、爽やかなシトラスがわたしを包み込んで、閉じ込めた。わたしより20センチくらい高い凪は簡単にわたしを腕の中におさめる。
そうして耳元に、アルコールのせいか熱くなった息がかかった。
「…………したい」
まるで縋るような甘ったるい声がわたしの鼓膜にゆるやかに届いた。
耳たぶに熱を落としながら、凪はまた、お砂糖たっぷり甘美に囁く。



