ながされて、絆されて、ふりむいて




「本当に?」と焼酎のグラスを手に、もう片方で頬杖をつきながら俺を覗き込む。垂れた目尻の先の涙ぼくろ。


吸い込まれそうなほど印象に残る瞳は、彼から色香の伴う噂が絶えないことに肯定を与える。


……まあ、俺はまんまるでぱっちりな花鈴の瞳にしか興味ないけど。昼に見たメッセージアプリのアイコンを目に浮かべれば自然と口角も上がる。


営業としてはこのわかりやすい表情筋に助けられている。花鈴を想って浮かべた笑みを対外的なものに変えて「本当ですよ」と穏やかに返す。


名波さんも俺と同じでかなり飲まされているはずなのに、顔や言動に1ミリたりとも表れていない。20代の若手はあと二人くらいいたはずだけど、見渡す限り潰れているのか姿を確認できない。


時代は変われど、名波さんのようにいくらでも酒に付き合えるタイプが昇進していくのだろう。



「名波さん、お酒強いっすね」


「まーな。飲みサーで鍛えられたんだよ」



下から視線を持ち上げるようにして俺のほうへと流す、その仕草が妙に色っぽい。この人はきっと、常に色気を身に纏って、内々から溢れ出ているタイプ。


……余計に花鈴を近づかせたくない。掴めなくて危うい、それでいてハマったら抜け出せなくなりそうな魅力が、男の俺でもわかる。この人は花鈴を惑わせそうなオーラがある。