ながされて、絆されて、ふりむいて



先輩にバレないように一瞬、もう一度だけ向こうのガラス張りの会議室を盗み見た。



「(は、)」



不機嫌が声と表情に出そうになった。慌てて引き締める。


さっきまで花鈴ひとりだった空間にもうひとり。それも、たった今名前の出た名波さん。



「(なんで花鈴と名波さんがいんの)」



何を話しているかなんて当然わからない。次の瞬間に、名波さんが突然花鈴に近づいて──……一瞬、重なったように見えた。



「は?」



今度こそ声が出ていたようで、口元をきつく結ぶ。先輩は俺がこぼした不機嫌に気がついていないようで一安心、だけど。



「(何あの人、マジで)」



なにやら花鈴に言葉を投げて、会議室を後にした名波さん。花鈴の表情は見えないけれど、あの近さは多分、慣れていない。俺相手でもたまに顔を赤らめるのに。