「……ありがとう、ございます」
「いーえ。解約手続、今度こそお願いしてもいいかな」
はい、と小さく頷く。よろしくね、と爽やかな笑みを浮かべて名波さんは会議室を後にしようと立ち上がった。
その一挙手一投足を意味もなく追ってしまう。触れられた前髪、おでこのあたり、それと息がかかった耳元から熱が伝わって広がっていく気がした。
「あ、そうだ」
そうして名波さんが思い出したかのようにつぶやいた。ほかでもないわたしに投げられた次の言葉はわたしに反論する隙を与えなかった。
「今度、二人で飲みに行こうよ。お礼させて」
またチャット飛ばすね、と甘い余韻だけを残して会議室を後にした名波さん。



