「素敵ですね、きっと喜ばれると思います。理由の欄には『親族の冠婚葬祭費用のため』で良いかと思います」
「わかった、ありがとう」
流れた前髪が、ふわりと目元にかかって、書類に視線が落ちゆく。
さらさらと書いてゆくその文字が綺麗で、自然と目で追ってしまう。お手本のような文字と、ボールペンを握る羨ましいほど細長く白い指。思わず、頭のなかの感想が音として溢れた。
「名波さん、字、綺麗ですね」
「ありがとう、習字習ってたんだ。これだけである程度周りの信頼得られるから得してる。……あ、児玉さん、」
耳に馴染むすこし低い声に名前を呼ばれて視線が合わさったかと思えば、すっと手のひらが伸びてきた。そのまま上半身だけ起こすようにこちらに乗り上げてきた。
されるがまま、振り払うことなんてできもせずに行方を見守ることしかできなくて。
「……っ、」
「……ごみ、付いてた」
わたしの前髪に触れてから、耳元で囁かれた。近づいたせいで鼻腔をくすぐった甘すぎる香り。



