にこり、整いすぎた顔立ちから放たれるあまい微笑みはやっぱり破壊力抜群だと思う。色素の薄い垂れがちな瞳、薄くて形の良いくちびるはいつ見たって周りを魅了する。表情のつくりかただってじょうずだ。
それでもわたしにはあいかわらず一切効かないから、凪パワーは凄まじい。
わたしの向かいに座った名波さんが、目的の不備書類を広げる。付箋が貼られた箇所を指差す。
「ここ。解約理由の部分なんだけど、詳細ってどの程度まで書くべき?」
「ここで引っかかってしまったんですね」
名波さんの提出書類が不備となった事由は"解約理由不足"だった。そこまで細かく記載する必要はないけれど確かに「諸事情により」だけでは突っぱねられてしまうな、と納得する。どんな理由でも解約が通らないことは基本ないけれど、形式上、記載を求められてしまう。
「名波さん、差し支えなければ、理由を聞かせてもらってもいいですか? わたしに言いづらければ、用紙に書くだけ書いて提出で構いませんので」
「言えるよ。実は、妹が結婚するんだ」
「……妹さんのご結婚、ですか?」



