次は、誰にしようかな?

席替えが終わり、やっと授業が始まったくらいの事だった。
後ろのドアが、ガラ…ガラ…ガラガラと、音を立てずに開けようとしている、という事が分かるくらいの音で、開いた。
クラスメイトも何人か後ろを振り返っている。
僕も振り返ってみた。そこには、女性が立っていた。
綺麗に髪をセットし、場にそぐわない光を発しているワンピースを着て、立っていた。
女性は、手のひらを上に向け、綺麗に横にそろえて、僕たちの方に差し出していた。
「私に構わないで、授業を続けてください。」と言っているように見えた。
田村先生は、大きくうなずき、国語の授業を再開した。
それからしばらくして、その女性は去っていった。
はじめてのことばかりで、今日は本当に疲れた。
給食の時間では、一緒に食べる友達がいないせいで、隣の綺羅と机をくっつけて食べたけど、三浦の視線が僕の心臓を貫通していくので、落ち着かなかった。
そして、放課後。僕は一人、教室の席に座っている。
理由は…………………。
「こんにちは、か、こんばんわ。どっちがあってる?」
そこに現れたのは、綺羅と、はじめて見る女子だった。
「紹介するね。この子は、矢羽根咲。美術部で、ものすごく絵がうまいのよ。ねぇ、咲。」
綺羅が同意を求めると、咲は照れているのか、困っているのか分からない様子で、小さくうなずいた。
「へぇ、見て見たいな。」
僕が、軽くそういうと、咲が僕の方に一歩出てきた。
「見てくれるんですか⁉じゃあ、さっそく行きましょう!」
ちょ、ちょっと!と、止める間もなく、僕は咲に引っ張られるままに美術室に連行された。
「どう!この絵!綺羅を描いたんだけど…変?」
はぁ…はぁ…と、僕は息が切れていて、咲の方を見る余裕もなくなっていた。
文化部のくせに、運動部より足が速そうだ。
「ねぇ、見てよ!」
咲の押しの一言で、僕は絵に目を向けた。
「…!」
そこには、綺羅の姿が描かれていた。いや、確かに綺羅だが、綺羅じゃない。そりゃ、絵だから本人じゃないのは知っているが、でも、この絵はどう見ても、綺羅だけど、綺羅じゃないって思ってしまった。
何故か、だが…。
「綺羅はね、少し前に入院していた時があったの。私がお見舞いに行ったときにね、綺羅が寝ていたの。その時の寝顔が綺麗すぎて書いちゃった。」
そうだ。もう一つ違和感があるのだ。
この絵は…綺羅がどこかに仰向けに倒れている絵だったのだ。
「これは本当に入院しているときの写真?」
なんとなく、違うような気がしてたまらなかった。
「そうだよ。」
咲は満面の笑みでそういう。
僕は、違和感を抱きつつも咲の言葉を信じて、「じゃあ」と言い、美術室を去った。
そういえば…と思い返すが、「僕はなんで今日、放課後に二人に呼ばれたんだろう…。」
僕がもし、「絵は別に見たくない」っていったら、どうなっていたんだろう…。
そう思ったが、角を曲がった瞬間、不思議な部屋を見つけてしまい、気持ちはそっちに集中した。
『美術準備室』だった。
別に違和感何てないと思うだろうけど、窓から見えた中の絵に吸い込まれるように部屋に入ってしまった。