旅の出会い

僕はパーソナルスペースが広いのか、知らない人が側に居るのが苦手なのは部員の皆も知っての通りだと思う。
列車に乗る時は、学生の分際で自分の隣の席も購入して、誰も寄せ付けずに一人旅を楽しんだものさ。

あの日も同じ様にふた席用意して、目的地まで、ゆっくり読書でもしようかと思ったその時だ。
「あの……ここ、私の席なんですけれども」
そう言って声をかけてきた女性がいた。
最初こそなんて図々しいヤツだと思ったよ。だけれど顔を上げて驚いたね。
まさしく僕の理想を絵に描いたような女性だったから。
彼女のスマホのチケット画面をみせて貰うと、どうらや次の列車と勘違いして乗ってきてしまったらしい。
気の毒になって僕は快く隣の席を譲った。
人見知りの僕にしては珍しく話も弾んだものさ。

「……それが彼女とのなれそめなんだよ」

文芸部部長のマナブに彼女が出来た事を祝して、学校近くのファミレスでの食事会。
生真面目な部長がニコニコしてとても幸せそうなので、惚気を聴かされるのは悪くないと僕らは思った。
ただ、となりの空席をさして「彼女」と紹介された部員たちは誰も何も言えなかった……。


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【解説】

部長にだけ見える「彼女」は部長に取り憑いた幽霊だったようです。
現実は甘くない。塩でもかけて目をましてあげましょう。