(……この間から、どんどん強くなってない?)
都合よくクズ城葵にスイッチできるようになってる気がするし、
それを崩す隙が小さくなってる気もする。
(なんかたまに呼び捨てしてくるし。)
全く動かなかったシーソーが、僅かに傾いてきたような感覚。
胸騒ぎに無意識に一輪挿しを握る手に力が入った。
「表情がへたれになってる。減点1。あと口答えも減点1。
この間のも合わせて、3点貯まったからね!」
何故かムキになって語尾が強まってしまった。
そしたら今度はいつも通りに動揺した葵くんになる。
「へっ!?一気に2点!?
しかも1点分は口答えってめちゃくちゃ理不尽じゃない!?」
「会話聞かれてないからって口調乱れ過ぎ。
1点追加。」
ぶっきらぼうに背を向けてすたすたと歩き出す。
「ええー!?」とあんぐり口を開けて私の背中を見送る葵くんに、調子を狂わされて大きな溜息を吐いた。
「優里おかえりー。
ってあれ?何かあった?」
教室に戻るなり、小走りで駆け寄ってきた莉央が私を見て不思議そうな顔をする。
「何もないよ。ちょっと犬に手を噛まれただけ。」
「えっ犬?どこまで水入れに行ってたの?」
額面通りに言葉を受け取った莉央が、頭に疑問符をたくさん浮かべてる。
一輪挿しを元の場所に置くと、いつまでもとれない眉間の皺に戸惑いながら次の授業の支度をした。



