水道の前に立って控えめに蛇口を捻る。
水の出口に一輪挿しの口を添えると、ちょろちょろと水が溜まっていく。
「葉澄さん。」
タイムリーにちょっと照れたみたいな声が背後から聞こえて、驚いて振り返った。
「葛城くん。……どうしたの?」
葵くんがこっちにきた理由がわからなくて首を捻る。
向こうでさっきまで葵くんといた桐谷くんと女の子達が、何かを疑うように私達の様子を見ている。
「や、特に何もないんだけど……」
「ふ、何それ。用もなくこっち来たら変に思われちゃうよ?実際に今も、ほら。」
キュ、と蛇口を閉めた後、目線で桐谷くん達の方を指し示す。“怪しまれてるよ”って教えるために。
「いやっ、そんなの別にどうでもいいっていうか――」
「良くないでしょ。1人だけ特別扱いなんて、モテ街道に反してるもん。
先生として、それは見過ごせないなー。」
あはは、と笑って軽口。
この関係の目的を盾にとれば、葵くんは必ず黙る。
「……優里を弄んでる設定なんだから、おかしくないでしょ、今更。」
――あれ?反論してきた。
眉を寄せて、ほんの少し顔が赤い。
強がってるけど、これは葵くんだ。



