無意識に押し返そうとしてたらしい手を下げて、ふっ、と目を閉じた。
「優里。」
私を呼んだ色っぽい葵くんの声が、図書室内にしっかりと響く。
ここで初めて葵くんに気付いた先輩が、ビクッと体を跳ねさせて動きを止めた。
しん、と静まり返った室内に、葵くんがゆったりとした足取りで入ってくる。
片手はポケットに入れちゃって、かったるそうな顔で歩く様は、クズ城葵だった。
そうやって私と先輩のところまで来ると、葵くんの圧倒的なオーラに先輩が気まずそうに目を見張る。
葵くんはしばらく私達を見下ろした後、スッと私の指先を掴んだ。
「……優里は俺の、でしょ?」
射抜くように私の顔をじっと見て、葵くんはハッキリとそう言った。
気怠い真顔はクズ城葵なのに、目の奥は泣きそうな捨て犬の葵くんだ。



