「お久しぶりですね、先輩。
すみません、最近ちょっと忙しくて。」
申し訳なさそうに眉を垂らして苦笑する。
彼の下心はずっと透けて見えてるけど、気乗りしないから軽く会釈してその場を立ち去ろうとした。
「今、だめ?」
ぱし、と歩くために振った手を取られた。
前のめりの摺り足が一歩、私に近づく。
はぁ、面倒くさい。
ちょっとだけ付き合ってあしらうか。
「この後予定があるので、数分だけなら。」
嘘をついて時間制限を作って、あとで中断しやすくするための土台作りはぬからない。
先輩の顔がわかりやすく浮ついて、ムードも考えず唐突に私との距離を詰めてくる。
余裕もなく私の顎を持ち上げたせいで、よろけてドンと背中が本棚にぶつかる。
――出入り口の半分開いたままのドアからカタン、と小さな音がした。



