純情*ライアー


◆◇◆

週が変わって水曜日。
葵くんのレッスン日。


屋上手前、いつもの場所。



「さ、始めよっか。」



この合図も定番になってきた気がする。



「今日は何を?」



緊張して固い顔の葵くんも定番だね。


「んー。あ、そうだ。」


悩んで唸って、それからこの間のことを思い出した。



「葵くん、ちゃんと女の子の目見てお話しできてたね。
偉かったじゃん。」



ぽん、と一歩葵くんの前に踏み出して、下から顔を覗き込む。


構えてなかった葵くんがぴく、と背筋を反らせて、恥ずかしそうに目を逸らした。


「……おかげさまで、一個克服できました。」

「うん。モテモテクズ男への第一歩だね。
ものすご――く小さな、だけど。」


肩を揺らしてくつくつと笑う。
バツ悪く歪んだ葵くんの眉毛がぴっと動いた。


「また一言余計!」

「ごめんごめん。今のは良くなかったね。」



言いながら、無防備にふわふわと軽いミルクティー色の髪に手を伸ばす。


小さな頭を覆うようにぽふ、と掌を乗せて、数回弾ませた。


「頑張ったで賞。ご褒美あげます。」