「葉澄さんには前から興味あったんだよね。どう?この後。」
桐谷くんがくい、と親指で廊下の先を指す。
人のいない校舎の方。
私を欺く演技力。食えない態度。
ん――。正直めちゃくちゃ惹かれる。
“面白そう”と好奇心に胸が湧く。
乗っちゃおうかな、と頷きかけたら、葵くんの姿が脳裏に浮かんだ。
「……遠慮しとく。
桐谷くんと遊んだら、葵くん倒れちゃいそうだし。」
人間関係めちゃくちゃにする悪趣味もないのよ、私。
「そ、残念。まぁ、気が向いたら声かけてよ。」
引くのもあっさり。さっさと1人で帰って行った。
う――ん、ちょっと勿体無かったか。
でも、あの捨てられた子犬みたいな顔がずっと頭にチラつくから。
今回は我慢してあげますか。



