「……何赤くなってんの。
名前で呼ばれるのなんて慣れてるでしょーに。」
片眉を下げてクッと笑う。
女の子達に散々“葵”って呼ばれてるの、ちゃんと知ってるんだからね。
「いや……それは、その……構えてなくて。」
なにそれ。構えないと名前呼びすら耐えられないの?
何度でも呆れるけど、面白い。
こんなどうしようもないピュア、初めて出会った。
「次、葵の番ね?
早く呼んで。“優里”って。」
葛城くんの心臓の音が、聞こえないのに想像できる。
両手で顔を覆う指の隙間から、純粋すぎる瞳が私を覗いた。
「……ゆ、ゆ、ゆ……」
たった2文字に死ぬほどどもる。
ミルクティー色の軽やかな髪が、一文字言うごとにふわりと揺れている。
「あと一文字。頑張って?」
揶揄って笑いかける。
“ゆ”と突き出した薄い唇が、震えていて可笑しかった。



