「がっつりハードル下げて、初歩の初歩からやってみよ。」
「へ……?」
ぐずぐずなヘタレ顔した葛城くんが、きょとんとしながら私を見る。
異性を見てるってより、小さい男の子を見ている気持ちだ。
「まずは――……そうだな。
名前呼び、やってみて。」
幼稚園児レベル。
とりあえず達成感を得てもらうことにした。
「私の名前、優里。はい、呼んでみて。」
丸まった琥珀色の瞳に感情のない私の姿が映る。
垂れてる葛城くんの眉がキュッと寄った。
「――や、知ってるけど。でも、その。」
目も細まって頬が染まる。
こんなのもダメなの?本当、呆れるほど純情。
「呼ばないなら私から呼ぶから。見本ね、これ。」
調子が狂って、猶予を与える情けなんてかけちゃって。
「葵。」
色なく、ただ、呼んだだけ。
それなのに葛城くんの目がまた大きくなって、頬の赤みがぶわっと増した。



