「有名なカップルなのに知らなかったの?
あっ、ほら、今通った人だよ。」
「え……うわ、美人さんじゃん!やっぱ顔かぁー……」
噂話、全部聞こえちゃってるけど気にしない。
葵くんまで残り数メートルの距離をトト、と小走りで詰めて駆け寄った。
「葵くん、お待たせ。」
「優里さん!」
スマホからパッと上がった顔が、子犬みたいに無邪気に華やぐ。
大人びた顔立ちなのに、この笑顔は子どもみたいだ。
「あ、また“さん”付け。
そろそろやめない?って言ったのに。」
「あっ……や、優里もでしょ。“くん”付いてたよ。」
「……確かに。」
うっかりくん付けしてしまった口に手を当てて、バツの悪い顔。
それを見下ろした葵がくすぐったそうにクス、と笑った。
「帰ろ。早く図書館行かないと席無くなっちゃうよ。」
ゆるっと歩き出した葵の後について、靴を履き替えて外に出る。
私に向かって幸せそうに緩んだ葵の顔を遠くから見ていた下級生達が、「愛されてて羨ましい」と惚けた顔をしていた。



