純情*ライアー



「えー!優里、行っちゃうの!?」


葉澄さんの教室の入口で、水瀬さんの声がした。



「最近ずっと断ってたから、そろそろね。
でもすぐ戻るから。」



続いて、注意してなきゃ聞こえないくらいの葉澄さんの声。


葉澄さんが廊下に出てきて水瀬さんに背を向けた瞬間、微笑んだまま目の光がふっと翳った。



ドクンと胸に落ちる嫌な予感。



俺の前を素通りして曲がっていった方向は昼休みの今、人気のない校舎の方。




「――それでね、……って、葵、聞いてる?」



足が浮いては戻る。


嫌な動悸が続いて、判断がつかない。



(追いかけて、どうする?)



目撃してショックを受けた、で終わるのはもう嫌だった。




「ごめん、ちょっと用事。」



唐突な離脱に驚く友達たちを置き去りにして、もうとっくにいなくなった葉澄さんの背中を追いかける。


空き教室を全部こっそり見て回って、最後に辿り着いたのが屋上に続く階段だった。