耳で得た知識だけだけど、キスってもっと熱っぽいものじゃないの?
まして好きな人となら尚更。
――ガツン。
……今、自分で自分の傷を抉ってしまった。
馬鹿すぎるだろ、と頭を抱えた時、初めて葉澄さんの声が聞こえてきた。
「ダメですよ、これ以上は。
昼休みだし、たまに人が通る場所なので。」
――色っぽい声。なのに、すごく冷静。
(というか、無機質?)
心はかなり抉れてるのに、何故か頭は状況を分析しだしてる。
これ、彼氏彼女とかじゃなくないか?
――“男遊び激しいって話”
爽の言葉が頭を過ぎって、目の当たりにした現実と繋がる。
全身の血がサーッと引いていくのがわかった。
(……マジか。)
“彼氏がいる”よりショックかもしんない。
隣から教室を出てきそうな足音が聞こえてきて、慌てて壁に張り付いて息を潜める。
チラッと横目に伺い見た廊下を歩き去ったのは、男だけだった。



