純情*ライアー


昼休みの特別棟、社会科室に忘れ物を取りに行った時。

通りかかった空き教室から、カタンと物音が聞こえた。



それに反応して中を覗く。


――その時の光景に目を疑った。



男女のキス現場。


女側はこっちに完全に背を向けてて、男はキスに夢中で俺に気づかない。


チラリと見えた男の内履きの色は、2年生。



そして、上を向いていても綺麗に流れる真っ直ぐな黒髪は、
紛れもなく葉澄さんの後ろ姿だった。



(――彼氏いたんだ。)



ガツンと胸に落胆。思いっきり喰らった。



立ち去ればよかったのに、なぜか隣の教室に逃げ込んで立ち尽くしてしまった。



嫌でも耳に届く荒っぽく弾む男の吐息と、生々しいリップ音。


耳を塞ぎたくなった時、ふと思った。



――葉澄さんは、声どころか息ひとつ漏らしていない。