「ぜんぜんっ多分ここ曲がって、それから左?」
「残念、右。」
目の前を通った時に見えた友達と談笑する笑顔も控えめで、だから余計に見てしまう。
同じ学年にあんな人がいたなんて。
今日初めて知った。
「――葉澄 優里。」
「えっ?」
知らない名前を言った爽の声で我に返る。
気付いたら顔が彼女が消えた廊下の先に向いていて、パッと爽の方に向き直った。
「さっきの女子の名前。」
「なんで知ってんの!?」
「雑用押し付けられた時に職員室とかでよく会うから。
喋ったことないけど。
あと美人で成績優秀で、ちょっとした有名人。」
「……へぇ。」
爽が眉山を持ち上げて「ふぅん」と何かを訝る顔をする。
「……なな、なんだよ!」
「なんでも?純情男子が好きそうなタイプだなと思って。」
「は!?そういうのじゃねーし!」
(……いやいや、本当に。
ちょっと綺麗な人だと思っただけっていうか……)
言いながら、今まで感じたことない鼓動が胸に落ちていた。
――それが初恋で、一目惚れってやつだって、すぐに俺は自覚するんだけど。



