「波打ち際まで行ってみよ!」
「ちょっと待って。莉央、速いよ。」
手招きして走る背中を追いかける。
一歩踏み出した砂浜は思った以上に足を取られて、もたつきながら波打ち際に近づいた。
ザザン、とお腹に響く穏やかな波の音。
空気が温いから意外とそんなに寒くはなくて、ちょっと浮かれた気持ちになる。
「靴、脱ぐ?」
「脱いじゃおー!」
履いていたものを放って、裸足で波打ち際に走る。
着いた途端に波が押し寄せて、2人で「キャー!」と声を上げた。
「やっぱり冷たい。やめといたらよかったかも。」
「えー?でも楽しいよ。」
あはは、と笑いながら莉央は自ら濡れに行く。
私は波にビビりながらも、視界いっぱいに広がる青い世界をそっとスマホのカメラに収めた。
カシャ、と莉央の方からもシャッターボタンを押した音がする。
「桐谷くんに送っちゃおー。」
自撮りで掲げたスマホを目の前に動かして、嬉しそうにしている莉央を見てハッとして自分のスマホを見た。
開いているのは葵くんとのトーク画面。
それから、送信前の海の写真。
指先が、画面の上で止まった。
(私、綺麗だと思ったものを葵くんと共有しようとしてた?)



