「――葉澄さん!」
意を決したみたいな声に、立ち止まって振り返る。
「何?葛城くん。」
ほんのりと頬を染めて、緊張した顰めっ面が私をじっと見つめてくる。
「……おはよ。」
何を言うかと思えば、挨拶。
ふっと肩の力が抜けて、笑った。
「うん、おはよう。」
「今日の放課後さ、暇!?」
廊下の横幅いっぱいの距離、みんないるのに2人きり。
「今日は――、ごめんね。莉央と遊ぶの。」
ぐ、と言葉に詰まる顔が、残念そうに曇っていく。
「明日はどう?空いてるなら、後で連絡するけど。」
ぱっと上げた顔がすぐに輝く。
ありもしない尻尾が見えて、嬉しそうな無邪気な笑顔が純情男子そのものだ。
「空いてる!……し、連絡待ってる!」
「うん。じゃ、あとで。」
目を白黒させる莉央に先行して、再び歩き出す。
みんな呆気に取られてて、ざわめきが大きくなったのは私が角を曲がりきった後。
明日には噂の内容が、ちょっと変わっているのかも。
“別れたけど友達になってた”
くらいの、本当のことからそう遠くない内容だと、ちょうどいいと思うけど。



