「――このくらいかな。聞いてくれてありがと……」
ふ、と葵くんの方を見て時が止まった。
葵くんが、泣いてる。
目を見開いて、表情を無くして、はらはらと。
涙が葵くんの輪郭を伝って落ちていく。
「えっ…え、……何で葵くんが泣いてるの?」
焦ってその頬を両手で覆う。
親指で涙を拭ったら、その手を更に葵くんの手が包んだ。
「ごめ……、優里さんがずっと傷ついてたんだと思ったら、なんか、止まんなくなって……」
長いまつ毛が濡れて光る。
あったかくて、綺麗な涙。
葵くんの頬と手の温度が私の手にじわりと溶けて、心の奥まで溶かされる。
「う、……カッコ悪、俺……
痛いのは優里さんの方なのに。」
ぎゅう、と私の手を握りしめて、葵くんが目を閉じる。
へたれで必死で、苦しいほど、
愛おしい。
もう夕日が沈みきって、ぽつんと街灯に照らされる。
「……ありがとう、葵くん。」
葵くんの震える吐息が、白くなって空に溶ける。
私の傷を自分のことみたいに背負って、頼りなく私の手を握る手が、何よりも心強くて。
罪悪感に胸が痛んだのに、その手を離すことができなかった。



