「先、輩……」
反射的に強張ってしまった体を一歩後ろへ下げる。
私がもたもたと足を動かす間に、先輩はもう私の目の前に到達した。
「大人っぽくなってたから一瞬人違いかと思ったわ。
ブレザーも似合うじゃん。」
付き合っていた頃の延長みたいに、先輩の手が自然と私の頭に伸びる。
触れられそうになったことに反応して、咄嗟にその手を払い除けた。
「――なんでここにいるんですか?」
先輩に触れてしまった手を、胸の辺りで握り込む。
ずっと心臓が張り詰めていて、目も合わせられずやっとの思いで問いかける。
緊張しきった私の様子に、先輩がハッと笑った。
「今カノの家の最寄りなの、ココ。
つか、何怖い顔してんの?振ったの優里なのに。」
何の罪悪感も抱いていない先輩の顔。
この人の中では私が終わらせたことになってる。
心がパリンともう一度割れる音がする。
傷付くな、私。
この人は私が“あのこと”を聞いてしまったことを知らない。



