「なんか久しぶりに来たね、ここ。」
最近は人の多いオープンな明るい場所でしか会っていなかったから。
この開けてるのに薄暗くて人の気配のない感じが、なんだか懐かしい。
踊り場に着くなり葵くんは微妙な空気を醸して黙っている。
「偽装恋人するようになってから、来てないもんね。」
沈黙が怖くて、私は饒舌になってフラフラと狭い空間を歩き回った。
「優里さん。」
どうでもいい独り言みたいなお喋りに返事もせず、葵くんが私を呼んだ。
「……なーに?」
ぴり、と心が張り詰めてあえて緩い口調で応じる。
振り返って見た葵くんの顔は、緊張でいっぱいいっぱいだと物語っている。
言おうとしてることがなんとなく予想できて、無意識に体に力が入った。



