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――……
消灯時間間近。
女子の部屋から、爽や同部屋の男子が戻ってきた。
「うわっ寒っ
なんで窓全開にしてんの!?」
窓際でなんでもない顔をして佇んでいる葵にギョッとした友達の1人が、信じられないという顔でピシャリと窓を閉めた。
「別に、湯冷しだけど。」
「湯!?お前風呂出たの何十分前だよ……、
冷まし過ぎだろ……。」
静かだった部屋に活気が戻る。
消灯に備えて、それぞれテキトーに布団に入ろうとする。
爽が、先陣切って脱衣室に近い布団に目を付ける。
「俺、ここー。」
飛び込むように身を屈めた時だった。
「だめ、ここ俺の場所。」
窓際にいた葵がぽんと布団2枚を飛び越えて、先にその場所に座り込む。
幼馴染の珍しい割り込みに、爽は面食らってきょとんとした。
「さっき疲れててこの布団使っちゃったんだよ。
……だから他の奴に入られるのはなんか、やだ。」
気まずそうな演技のもっともらしい言い訳は、半分真実で半分嘘。
――そこは、優里が倒れ込んだ布団。
「あー、それは俺もやだ!
じゃ、こっちにしよー。」
爽は軽快に笑ってあっさりと別の布団を選ぶ。
そうしてる間に消灯になって、部屋に入ってきた担任に電気を消される。
先生の足音が遠のくまで、全員が暗闇で息を潜める。
その間、葵の頭の中にはずっと優里のことが浮かんでいる。
(……勘違いなんかじゃないよ。)
だってそれよりずっと前から、気持ちはあった。
それを君は知らないだけ。
もうとっくに冷たくなった布団に潜り込んで、消した痕跡を心の中で甦らせた。



