純情*ライアー



カチ、とスイッチを押し上げた音がして、古いドライヤーがやかましい音の割に優しい熱風を放出する。


重く風に靡いた濡れ髪に、ぎこちない葵くんの指が通った。




瞬間、束になった髪が風で解かれてムスク系のシャンプーの匂いが広がる。



「……やば、」


聞こえないけど、俯く葵くんの唇がそう動いた。

その頬がほんのり赤いのは、多分湯上りのせいじゃない。



「今日は私が子どもみたいだね。」


何度も髪を撫で梳く仕草と、程よく熱い風が心地よくて目を細める。


「そ、う……だね。」


はらはらと髪が舞い上がったり落ちたりする度にちらつく首筋に、葵くんの視線が落ちた。



時間をかけて髪が乾いてきて、地肌から毛先に滑る指通りがだんだんと滑らかになっていく。


髪を掴む時に地肌に葵くんの指の腹が優しくそこをくすぐって、ほんの少しだけぞくぞくした。