(浴衣姿の湯上り女子達に囲まれて、内心ドギマギしてるんだろな。)
かったるそうな背中をチラッと見てから、休憩スペース内の自販機に立ち寄る。
オレンジジュースか、サイダーか。
悩んでいると談笑の声を飛び抜けて、葵くんの声が耳に届いた。
「悪いけど俺はパス。
彼女いんのに、女子部屋行くのはナシでしょ。」
クズのフリして誠実な台詞。
――いや、本気になったクズの台詞だから、それで正解か。
サイダーのボタンを押しかけた指が思わず止まる。
聞こえてしまっただけなのに、急に盗み聞きしてしまったような気持ちになってしまった。
「えー、いいじゃん!みんなで遊ぶだけなのに!」
「やだ。誤解されたくない。」
拗ねた女の子の声と、軽い口調の葵くんの声。
ホント、外向けの演技だけは一級品。
(……行けばいいのに、女子部屋。)
修学旅行で誘われてこっそり女子の部屋に行く、なんて最高にモテイベントじゃん。
私を守るために、そんなチャンスまで犠牲にしなくたっていいでしょ。
そんな風に思うのに、どうしてか満更でもない気もして。
恋人ごっこを始めてから、何かおかしくなってしまった。



