「どーも。」
「キャー!桐谷くんに名前呼ばれちゃった♡」
両頬に手を当てて莉央が乙女全開ではしゃいでいる。
私と葵くんはなんでもない顔でちら、とお互いの顔を見合った。
恋人設定はたまの登下校と毎週水曜日の逢瀬で充分証明できてるし、今何か仕掛ける必要もない。
「せっかく会ったんだしさ、このあと一緒に回るとかどう?
葵と葉澄さんもそっちの方がいいでしょ。」
善意100%みたいな爽やかスマイルで桐谷くん。
「えっ♡それいい!そうしよっ、優里!」
ハイテンションでもうその気になっちゃってる莉央。
――なんかこの構図、前も見た。
「俺はいいけど。優里は?」
飄々としながら、私をじっと見つめる葵くんの目が子犬。
……だからにこやかにするしかないじゃないの。
「私もいいよ。そうしよっか。」
かくして、こんな旅先でも、
きっちり演じなくちゃいけなくなった。



