「探したよ!出番になっちゃうから早く行こっ」
そう言って彼女は葵くんの腕にドンとぶつかる様に絡みつく。
葵くんを甘えた目で見上げた後、こっちを見てジト、と視線を鋭くした。
(あらま、敵認定されちゃってる。)
心配しなくてもそう言うのじゃないのに。
割り込むつもりはないですよ、と場を離れようと腰を浮かせた時だった。
「暑。離れて。
……ていうか愛梨に呼ばれなくてもわかってたし。」
冗談めかしてうんざりした顔をしながら、葵くんはするりと愛梨と呼ばれた子の腕から抜け出す。
そして、その手の甲で彼女の頭をコツ、と叩いた。
――完璧なクズ城葵の演技。
目を合わせるのもスキンシップも、名前呼びだって軽やかにこなす。
今までの練習の成果の集大成を見せられたみたいな気分になった。
(やるじゃない、葵くん。)
まだ愛梨さんとやりとりしてる葵くんに向かって小さく微笑む。
そのまま気付かれないうちに、そっと背を向けてその場を離れた。



